あり得ない事だよ。

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あり得ない事だよ。

「あり得ない事が起こったぜ。マジで奇跡だ」  俺は隣で歩く田中に言った。俺たちは学校の帰り道で、いつものように下らない事を喋りながら駅に向かっていた。バカでかい夕日が眩しい。  いや、今日の話題は下らなくは断じて無い!  俺、青海 春人と田中は如月高校の2年生だ。この如月高校は生徒は勿論、教師まで美人が揃っている。周囲から羨ましがられる高校だ。 「あり得ないと言えば、この宇宙がこんな具合で存在してるのも奇跡以上の奇跡らしいよ」と田中は言った。興奮する俺とは対照的に田中は淡々とした口調だ。 「どう言う事だよ」と俺は言った。田中は良いヤツだけど、自分の話が終わらない限り、話を聞いてくれない。そんな悪癖はあるものの、サポート能力は抜群だし、たまに貴重なアドバイスもしてくれる。そして何より嘘は言わない。俺の目的の邪魔はしない。 「うん。今、言った通りだ。この宇宙が存在する事はあり得ない確率なんだ。調べれば調べる程、あり得ない事が分かってくる。有難い奇跡ってより、なんだか不気味な感じさえしてくるんだよ」と田中は言い、メガネのブリッジを上げた。俺も釣られてメガネに触れた。 「どう言う意味だよ。気味が悪いって」 「いや、こんな偶然あるのかなって」と田中は歯切れが悪い。「誰かが創ったって考えた方が自然らしい。強いて言えば、神?だから学者の中にも神の存在を信じてる人も多いらしい」 「神、様、ねぇ」と俺は言い、眉をひそめた。思わず『様』をつけてしまう。これは最近、ラッキーに恵まれているからだ。しかし、コイツの口から神なんて言葉が出るとは思わなかった。
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