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「もう三ヶ月経つんだぞ? 三ヶ月新曲無しはさすがにインディーズバンドとして終わりだろ」
溜息混じりにそう言って、仁織がコーラフロートのアイスを口に運ぶ。
「テテショックの余波が大き過ぎたね」
「あんな感じのアイドルなんてごまんといんじゃん。さっさと他の奴に乗り換えろよ」
あまりにも聞き捨てならない言葉に俺は身体を起こし、テーブルをどんと拳で殴った。
「テテの、なぎさの代わりなんかこの世に存在しねえんだよッ!」
「腐った女みてぇなこと言ってんじゃねえ! 諦めてさっさと切り替えろグズッ!」
「女の腐ったようなだし、まずそんな蔑視表現使う最低野郎に言われたくねぇんだよ! 五股かました年中発情期野郎がッ!」
仁織が手を出そうとした――が、智哉の視線を受けて仁織も俺も背もたれに身体を預けて息を吐く。危なかった。もう少しで殺されるところだった。
「とにかく、もう少し様子を見よう。作詞作曲を一手に引き受けているのは世理人なんだ。元々の月一の新曲なんてペースが三年続いたこと自体奇跡的だったんだ」
「そうかもしんねーけどさぁ……毎週末同じ曲ばっか練習してライブやってさ……つまんねーんだもん」
不貞腐れたように口を尖らせ、アイスを食べ切った後のコーラを仁織が音を立てて飲み干した。
「……俺だってやべーと思ってるよ。けど、音楽が生まれねぇんだからどうしようもねえじゃん」
長い襟足を掻き上げて、深い溜息を吐いた。
「今の世理人見てると、三年前の結成したばかりの頃のことを思い出すよ」
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