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第二話 瓜二つの少年
店内では軽快なUKロックが流れている。音楽が流れているところで音楽制作ができるのかと仁織に聴かれたことがあるが、がっつり制作してる時ならまだしも、スランプで先の見えないどん詰まり状態なら、テテと出逢ったような「切欠」探しをしたくなるというものだ。
窓の外を眺めると、ブレザーにスラックスの学生服を着た少年が向かい側の通りから道路を渡ってくる。と、入口のドアが開いて高校生はカウンターの席に座った。
俺は冷えたブラックコーヒーを飲み干し、トイレに席を立つ。
と、カウンター席に居た男子高生が俺の前を横切ってトイレの方に向かっていた。
この店のトイレは男女で分かれているが、男性用は個室一つだ。
席に戻って高校生が出てくるのを待っても良かったが、どうせ短時間のことだ。戻る方が面倒なので、高校生の少し後ろをついていく。
と、高校生はカウンターの脇にあるドアを入ってすぐの男子トイレを通り過ぎて、その奥にある女子トイレの方に歩いて行った。
まさかとは思うが、痴漢とか盗撮目的じゃないだろうなと疑う。
というのも、手前のトイレのドアに「MEN」と男性用トイレのマークと共にでかでかと掲示されているので、男なら最初に目に入るそのドアを素通りすることはまずはないからだ。
男子高校生が視線をドアに向けて、女子用トイレのマークが視界に入っている状態でドアレバーを握ったのを見た。
「おい、お前! 女子トイレで何するつもりだよ?」
「えっ……?」
声を掛けた瞬間、高校生は一瞬固まったがハッとしてドアから手を離した。
が、同時に持っていたボストンバッグも手から離してしまって落としてしまった。中からペンケースやテキストが飛び出して床に散らばる。
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