その石像には頭がない

２０２４年

歴史的発見か、ついに謎の偉人の痕跡を発見

　そんなニュースが駆け巡る。百年前に発見された石像。歴史上には存在せず未発見の時代があったのではないか、ということで当時はかなり騒がれたらしい。
　この時代のこういうものではないか、という説が浮かんでは消え浮かんでは消えてを繰り返してきた。何せ建造物などが残っておらず、どの時代にあったとしても矛盾が生まれてしまうためだ。

　この石像は頭がない状態だった。一体誰をモチーフにして何の意味で作られたのかさえわかっていなかった。しかし発掘調査の中で頭だけの石像が発見された。誰もがあの頭のない石像の頭部ではないかと期待し、分析の結果同じ時代の全く同じ石であることがわかった。地中深くに埋まっていた為風化もせずかなりきれいな状態で残っていたのが功を奏した。
　首の断面はデコボコしていて、明らかに意図的に頭が落とされた形跡だ。これが一体どういうことなのか論争が起きている。ネットには様々な見解が溢れていた。

「落とされたのなら恨まれていた。あるいは後の権力者に破壊されてしまったのではないか」

　これが一番有力だ。ピラミッドもそうだ、前の時代の王のピラミッドというのは破壊され新たなピラミッドとして作り替えられてしまう。自分の権力を示すため、前の王の権力を歴史から消してしまうのはどの国も同じだ。
　しかし完全に消すのではなく頭だけ落とされ体を残された。この石像は当時ここに住んでいた者たちにとって英雄のような存在であり、絶望を見せつけるために体は残されたのではないかという見解が広がりつつある。
　幼い頃から歴史のミステリーの虜だった友人は目を輝かせながらその話をしていた。

「もしも新たに何かわかれば歴史がひっくり返る」

　日本と違って世界では国が作られては滅ぼされ、の繰り返しだ。歴史に名を残していない国の数など一体どれほどあることか。
　世界史に文字通り新たな一ページが追加されるかもしれない。友人は幸せそうだ。この国と神についての書物は一冊しか見つかっていない。劣化が激しく紛失している部分もある。慎重に調査が行われることとなった。

「この石像について昔の人はどんな思いを抱いていたんだろうなぁ」
「さあな」
「お前本当に冷めてるね。さあな、じゃなくてさ。どう思うよ」