第一話『空の少年』

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 「…………」  そもそも僕は過去を思い出したいのか、よく分からなくなってきた。  誰も教えてくれないということは、きっと思い出さない方がいいのかもしれない。  僕自身も、とりわけ思い出したい記憶も理由も何も無い。  ただ、移ろいでゆく季節の空のように、ひたすら時が過ぎ去るのを感じていく。  ただ、空虚に存在するだけの心を眺めていくのだ。  きっと、独りで、永遠に――。  「あ……お願い、待って……」  "雀のようにか細い声"は、僕の耳朶を弱々しく掠った。  奇跡的に拾えた声の痕跡を、目線で辿ってみる。  しかし、声の正体を視認するよりも先に、"真っ黒い毛玉"の感触は僕の足首をくすぐった。 ・
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