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「野良猫……」
「……その子は、"地域猫の黒吉"だよ」
今度は鈴のようにか細くも、より鮮明に響いてきた声の主。
視線を足下の毛玉から前へあげれば、相手の姿は僕の網膜にハッキリと像を結んだ。
"扁平な雀の頭部"さながら、耳上辺りにぴったりとついた短い黒髪は艶めく。
小柄で華奢な体躯に、真っ黒で丸い瞳が露みたいに輝く"少女"は、まさに雀みたいだ。
「君は……誰……?」
どうせ訊いても、また会うこともなければ、もう互いに忘れているかもしれないのに。
気付けば僕は雀みたいな少女へ、自然と名前を尋ねていた。
一方、無愛想に声をかけられた少女の黒い瞳には、一瞬だけ非難めいた力強い光が灯っていた。
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