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ちらりと彼を見る。
私は彼のことが苦手だ。
不安はない。
さっきそう言ったけれど本当はウソ。
「それにこれ、生徒会室に忘れてましたよ。今日使うんじゃないんですか?」
「あっ!ごめん……」
私はこの彼を……大きな脅威に感じている。
「結衣さんって肝心なとこ抜けてますよね」
「い、今持ってこようと思ってたのよ!」
「……本当に?」
ぎらりと光る目がこっちを見る。
――ゾクッ。
まただ。
この表情。
私は彼のこの目が怖かった。
隙を見せたら食ってかかられそうなこのまなざし。
──怖い。
本当に不安はなかったはずなのに、この彼が生徒会にやって来てから、おびやかされることばかりだ。
彼、宇佐美直人(うさみなおと)
高校2年生。
うすい茶髪にふわりと巻かれたパーマ。
しゅっと鼻すじが通っていて、ぱっちりとした二重の彼は人当たりがよく、要領もいいため男女問わず、多くの人がついてくる。
もちろんそれだけではない。
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