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それから数年。
世の中のことに詳しくなったユノは、『光の魔法使い』と呼ばれていたキリヤの正体を知った。
だからもう二度と彼に会うことは叶わないと思っていたのに。
厳しい状況下にある村人達の期待を一身に背負って入学した国立魔法学園の入学式で、ユノはあの美しいプラチナ色を再び見つけたのだ。
荘厳な石造りの講堂。
天井はどこまでも高く、講堂に満ちる空気は澄み切っていた。
新入生、在校生合わせて千人は軽く超えるだろう学生がいるはずなのに、物音は一切せず、そこに響くのは新入生を代表して魔法使いの誓いをする学生の足音のみ。
講堂の座席は左右に一つ一つ手の込んだ彫刻が施された木製の長ベンチがずらりと並んでおり、真ん中の通路には赤い天鵞絨の絨毯がひかれていて宛ら王宮のようであった。
赤絨毯の上をまだ十三歳という年齢にもかかわらず、物怖じせずに堂々と歩いていくその少年は、紛れもなくあの日ユノに手を差し伸べてくれた美しいキリヤだった。
数年ぶりにその美しい姿を目にした。
プラチナ色の輝く髪は、あのときと変わらずに内側から光り輝いているような美しさだった。
ユノは懐かしさで胸を震わせながら息を呑んだ。
こんなにも美しく威厳がある彼は国王の第二王子だというのだから、よりいっそうそこは王宮のように見えた。
王室に産まれる第一王子は王の後継者、第二王子は『光』の力で国を守る特別な存在だといわれているのも頷ける。
このシュトレイン国立魔法学園伝統の正装である魔法使いらしい漆黒のローブは、まだ幼いユノには重く、引きずるようであったが、年若い王子は完璧に着こなしていた。
まさに生まれながらの王子と言った風情だ。
そのキリヤは壇上までたどり着くとひらりと軽やかに身を翻した。
「本日シュトレイン国立魔法学校に入学することを許可された私達新入生は、神より特別に与えられた魔法の力を人民のために役立てるべく、日々鍛錬を重ねることをここに誓います」
美しい声が静謐な空間に響いた。
だが会いたかったキリヤの姿を再び見ることは叶ったものの、同じ学園内であっても身分によってクラスや寮が分かれているため、王族である彼と平民中の平民であるユノが触れ合う機会は全く無かった。
ユノが四年生の学年末試験で平民出身者でありながら、学年一位の成績を修めるという快挙を成し遂げ、十八歳になる年の五年生から学園の生徒会役員になるように、とアンリ学園長から任命されるまでは。
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