一章、薄幸の少女、売られる

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一章、薄幸の少女、売られる

 明治時代の中ごろ、日本は過去に例をみない災害に遭い、社会は大混乱に陥った。  しかし、そんな困窮を極めた日本に、救いがあらわれた。  それまで幻想の中の生き物として語り継がれていた、あやかし族があらわれたのだ。  あやかし族は美しく、人間にはない異能を持っていた。  天狗皇族(てんぐこうぞく)というあやかし族の皇族に率いられ、奇跡のような能力で国を救ったあやかし族は、人間たちの社会の復興を指導するうちに、支配者層となった。  人間は支配される側、下位種族へと堕ちる。  しかし、そんな人間の中に、天狗皇族に溺愛される特別な存在がいた。 「きみは、かわゆい! しかも、俺の運命の(つがい)なのだ。結婚しよう!」  これは、 新生日本帝国の帝都で、 天狗皇族の 『運命の(つがい)』 に選ばれて溺愛される人間の少女、桜子の物語である。
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