三章、開花と飛翔

13/20
前へ
/48ページ
次へ
38、また通ってみては    折り鶴は、ちゃんと仕事を果たした。  少しして、キヨとウサ子は折り鶴を持って「お呼びでしょうか」とやってきたのだ。 「桜子さんは天才だな! すごい、すごいっ」  京也は全力で成功を喜んで、桜子に自信をつけてくれた。 「京也様やみなさまのおかげです、ほんとうにありがとうございます……!」 (もっと練習して、私はこの力を親しい人々や、世の中のために役立てたい!)  桜子は、そう思った。  キヨやウサ子が来たところで、京也は「本日はこれくらいにしようか」と終わりを告げた。  キヨは自室に戻った桜子に付いてきて、煎茶を出してくれた。   「折り鶴が生き物みたいで、可愛いですねえ」 「ずっと動かし続けるのは大変みたい。もう動かなくなっちゃった」    桜子はテーブルの上に折り鶴を置いて指先で撫でてから、陰陽五行について書かれた教本を本棚に入れた。  本棚には高等学校の教科書が並んでいて、なんとなく手が伸びる。  教科書を開くと、懐かしい気分になる。  教科書は、くたびれていてページがくたくただ。最初は折り目もない新品だった。  1ページ1ページ、1日1日、桜子が持ち歩いて読みこんで、くたくたになったのだ。 「あるじさま、おべんきょうがおすき」  もみじの無邪気な声に、桜子は頷いた。 「せっかくですから、また通ってみては」  キヨが勧めてくれる。 「……行ってみようかな」  桜子は、帝立高等学校に再び通うことにした。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

187人が本棚に入れています
本棚に追加