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「ミーナミ、おはよ」
同級生で親友のマキちゃんが駅から続く学校への通学路で声を掛けてくる。
「おはよ。はあ…」
「どした?元気ないよ」
「うん、ちょっとね…」
「ミナミらしくない、顔が暗い」
「マキちゃんさぁ、ブローチってする?」
「ブローチ?しない。お母さんはたまに着けてるけど」
「あっ、お母さんならブローチするよね」
「ん?もしかして例の年上のダメ男の彼氏?ブローチが部屋にあったとか?」
「人の彼氏をダメ男って呼ばないでよ」
私はマキちゃんを睨みつける。
「ごめん。でも、見るからにチャラそう」
「かもね。クローゼットのアクセサリーとかを無造作に入れてるお菓子の缶にさ、針の部分が取れたブローチが入ってた」
「ハイ、それ100%他に女がいるやつ。だからダメ男だって何度言えばわかるの?」
「マキちゃんと違って私は恋愛経験少ないよ、どーせ」
「まあまあ。その彼氏がアクセサリーを入れる缶にミナミのアクセサリーも入れてみれば?」
「何のために?」
「他の女を牽制しつつ燻し出す毒餌」
「あのさ、ゴキブリホイホイじゃないんだよ?そんなに上手くいく?」
「やってみる価値はあるんじゃない?罠に引っ掛かって女が乗り込んでくるかもしれない」
「勝てるかなぁ。大人の女性に」
「ミナミ、若さは最強の武器だよ。罠に掛かったら女を返り討ちにする。で、情けない言い訳をするようなら彼氏もスッパリ切る」
「そんな…。キタミと別れたくない…」
「若さは最強の武器だけど、有限。限られた時間の中で王子様を探して捕まえる。私の見立て通りのダメ男なのか、ミナミを大切にする人なのかしっかり見極めなきゃ」
「うーん…」
「もし別れたら合コンしようよ。大学生との合コンのセッティングするから」
「マキちゃんは王子様が見つかった?」
「まだかな。将来性は5つ星でも安定性に欠ける相手ばかり。大学に行ったら就活があるから安定性も見極められるかも」
「フフ、マキちゃんはハンターだ。常に美味しそうな獲物を狙ってる」
「そうだよ、良い男は奪い合い。狩られる前に狩る、狩られたら奪う、獲られたら奪い返す」
「強いね。もし…もしもだけど、キタミとダメだったら大学生との合コン行くよ」
「そうこなきゃ。恋は常に戦いだから」
「ありがと、なんか元気出た」
その日は全然授業に集中出来なかった。針の取れたブローチが何を意味するのか考えていた。
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