僕があなたを消した理由

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「チャイ、ただいま」  落ち込んでいると、玄関の扉が開いて、お父さんが帰って来た。 「どうした。お母さんは怪我もしていないし、落ち込まなくて、大丈夫だぞ。お母さんの方がお前を心配して、俺に『チャイが元気がない』って、ラインして来たんだからな」  お父さんは、そう言って、スマホの画面を僕に見せてくれたけれど、あいにく犬の僕には何て書いてあるのかわからない。 「チャイ、ちょっと美味しい物食べに行こうか」  お父さんは立ち上がりながら、僕にそう声をかけてきた。 「美味しい物」という言葉に、僕の心は途端に浮き立った。  嬉しくて、ワンワンと吠えると、お父さんは、笑いながら僕の頭を撫でてくれた。  お父さんが連れて来てくれたのは、公園の近くにあるカフェだった。
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