僕があなたを消した理由

34/46
前へ
/46ページ
次へ
 その人はお父さんの言葉に頷くと、僕達の前を歩いて、案内してくれた。  少し歩いて、一つの部屋の前で、その人は立ち止まった。 「福島さん、チャイちゃんと笹原さんが来られましたよ」  そうして。  軽くノックして、扉を開いてくれる。 「チャイ……」  僕がお父さんと一緒に部屋に入ったとたん。  そんなふうに、細くて小さな声で、僕は呼びかけられた。  見ると、白いベッドの上に、枯れた木のように痩せた、男の人が横たわっていた。  その人は、顔を横に向けて、僕を見ていた。 「おいで……」  そうして。  僕に手を伸ばして来た。  僕は、ゆっくりとその人に近づいた。  お父さんは、僕を止めることなく、僕のリードを持ったまま、後ろを付いて来てくれた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加