僕があなたを消した理由

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 けれど。  けれど、ね。  できることなら、ご主人様と一緒に過ごしたかったよ。 『あれの命日の日に、こんなモノを拾う何てな』  お墓に迷い込んでいた子犬だった僕を、あなたは拾ってくれて。 『飲み物のチャイに似た色をしているな。名前は、「チャイ」で良いか』  僕に名前を付けてくれたのは、あなただった。  あなたとの散歩はとてもゆっくりで。  お兄ちゃんのようには行かないけれど、でも、あなたと行く散歩はとても楽しかった。  幸せだったよ、僕は。  あなたと過ごせて、一緒にいれて、とても幸せだった。  だから、記憶の中のあなたを消したんだ。  あなたの傍にいれないことが、とても哀しかったから。 「儂のことは……忘れてええ……だから、幸せに……元気で過ごしてくれ……」
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