僕があなたを消した理由

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 そう言ってくれるご主人様の手は。  とても細くて、ゆっくりとしか動かなかった。手が震えていることは、頭の撫で方でわかった。  お兄ちゃんが「もう、会えなくなる」と言ったこと。そうして、ご主人様から漂う、生きている人達からは、決してしない匂い。  だから。  だから、できることなら、最後まで、このままご主人様と一緒にいたかった。  でも。 「じいじ―!」  不意に。そんな声がして、閉じられていた扉が、バンっと乱暴に開いた。  開いたドアの方を見ると、五歳ぐらいの女の子が立っていた。 「じいじ、来たよ!」  女の子はそう言って、ご主人様がいるベットに近寄ろうとした。 「(かなで)、待ちなさい」
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