僕があなたを消した理由

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 でもしばらくすると、 「じゃあ、仕事がありますから、これで」  お母さんはその話していた相手に行って、歩き出す。 「ご近所さんだと無視するわけにもいかないし、でも長く話す内容でもないのよね。この時間帯が、一番タイミングが計りやすいのよ」  と、前に。僕の足をタオルで拭きながら、そんなことを言っていた。  だから、お姉ちゃんとの散歩の距離よりは、お母さんと散歩するのは短い。  でも、僕の足を拭いてくれたり、ご飯を出してくれたり、トイレの掃除をしてくれるのは、お母さんが圧倒的に多かったから、僕が一番好きなのは、お母さんだった。  お母さんが仕事に出かけた後、僕は家の中で過ごしているけれど、僕が入るのを許されるのは、玄関と、居間に続いている廊下、そして居間だけだから、たいていはみんなが帰って来るまで眠っている。
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