僕があなたを消した理由

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「人には、色んな事情があるんだ……」  あの女の子は、息子さんの子どもで。  きっと、あのまま僕があの部屋にいたら、ご主人様も困ったことになるのだろう。 「また、来よう。チャイ」  お父さんはそう言って、立ち上がった。  本当は、また病室に戻って、ご主人様の元に行きたかった。  でもそうすれば、ご主人様もお父さんもきっと困ったことになってしまう。  それでも、「また来よう」と、お父さんは言ってくれた。  ご主人様の息子も、「ありがとうございます」と言ってくれた。  だから。  僕は静かにお父さんと一緒に歩いて、車に乗り込んだのだ。
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