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あとは、スマホを落とした女性に声をかけたこととか、小さな女の子の飛んでいってしまった風船をキャッチしたりとか、電車でおじいさんに座席を譲ったとかまあその程度のことなのだが――。
「……あのさあ」
あたしが思いつく限りの最近の出来事を語ると、周囲を取り囲むクラスメート達はみんな揃ってため息をついたのだった。祐輔がこめかみをおさえて首を振っている。
「君がそういうキャラだってことは知ってるよ。息を吸うように人助けしちゃうのは君の良いところだし、だからこそモテるんだろうし。ああ、先日セクハラされてた先生を助けたのも君だっけ?」
「あれはあのクソオヤジがムカついただけだよ。他の件だって、なんか見捨てたら気分わりーし、あたしならできると思ったから」
「はいはい。……その様子じゃ、どこで人に惚れられてたってわからないと思うんだけどね。それこそ、君が直接助けた人じゃないのかもしれない。それこそ、痴漢を助けたところを、たまたま八戸さんが見ていて惚れちゃった……なんてこともあるかもしれないよ?」
「う、うーん?」
そうかなあ?と首を傾げるあたし。目撃者まで気を配ってはいないが、それでもあんなキラキラな美少女がいたら気づきそうなものではあるが。
「ねえ、それはいいんだけど……」
クラスメートの女子の一人が、不安そうな声を出した。
「花月ちゃん、どうするの?あの子の気持ちに答えるの?同性に興味ないんでしょ。だったら、ごめんなさいするの?」
「う、うーん……」
そう問われると、困ってしまう。
今まで、男の告白も女の告白もほぼすべてを断ってきたあたしだ。理由は告白してくる相手のほとんどが“知らない相手”ばかりだったということ。同時に、部活に集中したいから恋愛に時間を取りたくない、などだった。
だから、普通に考えれば、今回もお付き合いは難しいと思うのである。ただ。
――クラスメートになったんだし。当面、顔合わせるんだよなあ。
あまり無下にするのも気まずい。何より、彼女がどういう意図で自分に告白してきたかわからないのがどうしても気にかかるのである。
「……ちょっと考えるよ」
とりあえず、そう答えたのだった。
まずは、八戸鮎奈、彼女の正体と意図を突きとめるのが最優先だと思ったから。
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