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<中編>
そもそも、彼女は本当にあたしのことが好きなんだろうか。それも友情とか憧れではなく、恋愛的な意味で。
――一目惚れ?……そういうの、本当にあんのかなあ。
個人的には、あんまり一目惚れ的なことを信じてはいない。だって、いくら見た目がかっこよかったり美人だったりしたって、中身がクズな人間なんかいくらでもいるではないか。
かっこいいなーと外見に憧れることはできよう。しかし、恋愛とはガワだけでするものではない。相手の性格も個性も長所も短所も何もわからないのに、それだけで惚れたなんだと簡単に言えるものなのだろうか。
――それに、やっぱりあの子を見かけたの、今回が初めてだと思うんだよなあ。彼女、どこであたしに惚れたんだ。
本人に尋ねるのが一番早い、それは間違いないのだが。
いかんせん、彼女の“告白事件”があまりにもセンセーショナルだったせいで、なかなか話しかけるタイミングがつかめないのだ。休み時間のたびに、彼女も自分も友人達に取り囲まれてしまうからである。
「花月お姉様ああああああああああああああ!」
しまいには。
昼休みになるや否や、同じ陸上部の後輩女子二人が教室にすっとんできた。
「聞きましたあああああああああ!わたし達のお姉様が、どこの馬の骨のものともわからぬ女に告白されてかっさらわれそうになってるってえええええええええええええええええええ!!」
「どこのどいつですかお姉様!とりあえずそいつの名前教えてください!校舎裏に呼び出してリンチ……じゃなかった決闘を申し込みますので!」
「ねえ今リンチって言った?リンチって言おうとしたよなオマエ!?」
「聞き間違いですええ間違いなく聴き間違いですとも!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおん嘘だと言ってくださいお姉様ああああああああああああああああ!」
「誰がお姉様じゃ!うっさいわゴラ!!」
後輩ふたりに泣きつかれ抱きつかれ、ついでに不穏なこと言いだすのをなんとか阻止しようとする状況。
とてもじゃないが、本人のところに行くことなどできようはずもなかった。
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