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「──タナカさん、おれやっぱり雪嫌いだわ」
「えっ?」
「寒いし、積もると面倒だし、嫌なこと思い出すから」
「……そうですか」
タナカさんはなにも聞いてこない。普通だったら……いや、おれたち世代だったら「嫌なことって?」と聞き返すだろう。だって、それが会話のキャッチボールだから。
「気にならないの? 聞いてもいいんだよ?」
「え、だって、嫌なことなんでしょう? 店長が話したいとか、話したくないとかの前に、わたしがそれを聞きたくないです」
「あ、そっち。なるほど、そういう考えもあるのね」
「……話したいんですか」
「んー。話したら、たぶん……いや、絶対タナカさんに嫌われるだろうから話さないでおくよ」
「なんですか、それ」
「なんだろうね。でもさ、さっきのはあまり良くないよ。正義って一歩間違えると暴力だから」
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