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「…えっ?」
「だから、今日から保育園ってところに行くのよ?お友達たくさん作ろうね?藤太。」
そう言って笑い、制服を見せる母絢音に、積み木で遊ぼうとしていた藤太は瞬く。
「ほいくえんて、なあに?ママ。」
「んー…藤太と同じくらいの年齢の子が、沢山いるところかな?お遊戯したりお歌歌ったり…楽しいわよ?」
「ママは、いかないの?」
「うん。ママは、お家で雪ちゃんと待ってる。だからね?良い子で行けるかな?」
「雪ちゃんも、行かないの?」
「雪ちゃんは、まだ小さいから行けないの。藤太はお兄ちゃんになったから、行けるのよ?すごいねー」
「でも、ボク…ママが…いい。ほいくえん、いや。」
言って抱きついてくる我が子に可愛さはあったが、絢音は心を鬼にし、藤太に制服を着せると、不安げな顔をする彼を連れてマンションの外に出る。
すると、カラフルなペンキで塗られ、天井部分に三角の突起が2つついたバスがやってくる。
「あ!ねこしゃん!!」
パァと顔を明るくする藤太を見て、絢音は計画通りとばかりにニヤリと笑う。
「はーい。おはようございまーす。今日からのお友達は君かなぁ?」
バスが停まり、中から猫耳のカチューシャを付けた若い美人の保育士が現れると、藤太は益々目を輝かせる。
「藤太、せんせ…じゃない。ネコさんにお名前言える?」
「あい!なつめとうた!2さいでしゅ!」
「うん!元気でよろしい!じゃあ、ネコさんと一緒に、保育園行けるかな?」
「あい!いく!ママ!バイバイ!!」
「ハイハイ。行ってらっしゃい!」
「わーい!!」
そうして保育士に導かれながら、楽しそうにバスに乗り込んで行く藤太。
やや待って、その場を後にして行くバスを見ながら、絢音は盛大にため息をつく。
「ホント、美人に弱くてコスプレ好きのお調子者…一体誰に似たんだか…」
きっと今頃、その相手はくしゃみの一つでもしているだろうと小さく笑って、絢音は藤太の保育園デビューが無事に終わることを願いながら、家に戻っていったのでした。
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