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「新幹線の切符持った?」
忍が訊く。
「大丈夫。ちゃんと財布に入ってるから」
肩から下げたポシェットを持ち上げ、『結亜』はにっこり笑顔で答えた。拍子に、初デートで篤紀からもらったパワーストーンのキーチェーンが、弾むようにきらりと揺れた。
『――焼けた車内で見つかった、身元不明の焼死体は、風俗店勤務の高岡未亜さんと判明。職場の同僚によると、高岡さんは日頃から気持ちに浮き沈みがあり、仕事も休みがちだったということです。先月二十日頃から行方がわからなくなっており、警察には捜索願が出されていたようです。高岡さんには身寄りがなく……』
「結亜ー! 何してんのー? 新幹線の時間遅れちゃうわよー!」
玄関から、忍が叫ぶ。
「はーい! 今行くー!」
『結亜』は、テレビのスイッチを切った。
(了)
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