25人が本棚に入れています
本棚に追加
「施設の人にお姉ちゃんの行き先聞いたんだけど、さすがに簡単には教えてくれなくて。仕方がないから、有り金はたいて興信所に頼んで……」
未亜の声が遠くなる。結亜は、意識を保っているのがやっとだった。
「びっくりしたよ。まさか、あんないい暮らししてるなんて」
未亜の話が続く。
「里親さんも優しそうで。幸せそうで。あたしなんかと大違い」
その声に、棘が混ざる。
「高校生活も楽しかったみたいじゃん? あんなかっこいい彼氏もできて」
結亜はハッと顔を上げた。
「見てたの?」
いつの間にか、車は山の中を走っていた。
「もちろん。ちゃんと知っておかなきゃ。だって、お姉ちゃんの人生は、あたしの人生でもあるんだから」
「え?」
「今までずっといい思いしてきたんだから、もう十分でしょ? 今度はあたしに譲ってよ」
「何……言ってるの?」
「いいでしょ? だってその人生は、もしかしたら、あたしのものだったかも知んないじゃん?」
「ちがっ……」
突如、急ブレーキがかかる。結亜の身体が、シートベルトに食い込んだ。
「お姉ちゃんばっかり幸せなんて狡い。双子なのに」
――ドッペルゲンガーじゃね?
智也の声が、耳の奥に蘇る。
――それって確か、会ったら死ぬんじゃ……?
ドアノブに手をかける。ドアにはロックがかかっていた。
「いや……っ。お願い……っ」
何度も結亜は首を振る。その目にじわりと涙が滲んだ。
「だから消えてよ。今度はあたしが、『結亜』になる番」
結亜に覆い被さると、未亜はその首筋に、スタンガンを押し付けた。
最初のコメントを投稿しよう!