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「施設の人にお姉ちゃんの行き先聞いたんだけど、さすがに簡単には教えてくれなくて。仕方がないから、有り金はたいて興信所に頼んで……」  未亜の声が遠くなる。結亜は、意識を保っているのがやっとだった。 「びっくりしたよ。まさか、あんないい暮らししてるなんて」  未亜の話が続く。 「里親さんも優しそうで。幸せそうで。あたしなんかと大違い」  その声に、棘が混ざる。 「高校生活も楽しかったみたいじゃん? あんなかっこいい彼氏もできて」  結亜はハッと顔を上げた。 「見てたの?」  いつの間にか、車は山の中を走っていた。 「もちろん。ちゃんと知っておかなきゃ。だって、お姉ちゃんの人生は、あたしの人生でもあるんだから」 「え?」 「今までずっといい思いしてきたんだから、もう十分でしょ? 今度はあたしに譲ってよ」 「何……言ってるの?」 「いいでしょ? だってその人生は、もしかしたら、あたしのものだったかも知んないじゃん?」 「ちがっ……」  突如、急ブレーキがかかる。結亜の身体が、シートベルトに食い込んだ。 「お姉ちゃんばっかり幸せなんて狡い。双子なのに」 ――ドッペルゲンガーじゃね?  智也の声が、耳の奥に蘇る。 ――それって確か、会ったら死ぬんじゃ……?  ドアノブに手をかける。ドアにはロックがかかっていた。 「いや……っ。お願い……っ」  何度も結亜は首を振る。その目にじわりと涙が滲んだ。 「だから消えてよ。今度はあたしが、『結亜』になる番」  結亜に覆い被さると、未亜はその首筋に、スタンガンを押し付けた。
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