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 未亜の説明によると、二人は生まれてすぐに、児童相談所に保護されたらしい。  理由は、母親のネグレクト。父親は、どこの誰だかわからない。 「お客のうちの誰からしいんだけど、当時関係のあった人が何人かいたみたいで」  吐き捨てるように、未亜は言った。  母親の両親――つまり、結亜の祖父母にあたる人は、早くに他界。他に身寄りのなかった母は、水商売で生計を立てていたという。  未亜の話しぶりから、母が身体を売って金を稼いでいたことは容易に想像できた。 「それでうちらが生まれたわけだけど、とても育てられる状態じゃなくて、結局施設に」  運転しながら話す未亜の横顔を、結亜はぼんやりとした顔で眺めた。  あまりにも衝撃的な話の数々に、なかなか理解が追いつかない。額のガーゼが気になるのか、未亜は頻繁に指で掻いた。 「それでも母性がそうさせたのか、引き取りたいって何度も施設に掛け合って。そんなに言うなら一人だけってことで」 「それであなたが?」  なんとか声を絞り出す。 「うん。お姉ちゃんは、身体が弱かったから」 「そっか」  結亜は子供の頃、よく熱を出す子だった。そのせいで自分は母に捨てられたのだと思うと、いたたまれない気持ちになった。 「でもね。地獄だったよ。あの人との生活は」 「地獄?」 「あの人、毎晩のように男連れ込んで。あたしの面倒なんてろくに見ないで」  憎々しげに、未亜は顔を歪ませた。 「あたしの初体験はね、中一の時。当時、あの人と付き合ってた男だった」 「……っ!」  口元に両手を当てると、結亜は思わず息を呑んだ。 「結局、あの人にバレて、ボコボコにされて。それから家追い出されて。行くとこないから、友達んとこ転々として。中学卒業したら、歳ごまかして水商売して」  まあ、あんな家、いたくもなかったけどね、と未亜は皮肉な笑みを浮かべた。  想像すらもできない悲惨な出来事に、結亜は返す言葉もなかった。
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