ビジュアル系弁護士

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ビジュアル系弁護士

「ねえェッ、キミも椅子に座ってユラユラ揺れてないで他人(ひと)の話しを真面目に聞いた方が良いよ」  見かねたボクも被疑者の美少年に注意した。これ以上は許せない。  担当刑事との取り調べの際もこんなふざけた態度なのだろうか。 「フフゥン、いたってボクは真面目ですよ」  しかし美少年は楽しげだ。ボクたちをからかうように微笑みを絶やさない。  殺人事件の被疑者だというのに小学校の三者面談よりも遥かにリラックスして見える。 「じゃァ、キミはどうあっても本当の名前を言わない気なのか?」  さらにボクは彼に問いかけた。 「それは、地球上でのボクの名前?」  すぐさま被疑者の少年は聞き返した。 「そうよ。まさかベガ星に名前を忘れてきたワケじゃないんでしょ」  マリアは少年の態度に相当、イラついているようだ。  早口で、まくし立てるように口を挟んだ。 「フフゥン、その前に出来れば、あなた方の紹介をしていただきたいな」  彼からも注文された。 「え、ボクたちの?」  弁護士のシンゴが聞き返した。 「そう、あなたがボクの国選弁護人なんですよねェ」  被疑者の美少年はシンゴを見つめ微笑んだ。 「ああァ、ボクの名前は織田シンゴさ。世界でただひとりのビジュアル系弁護士だ」  まるで正義の戦隊もののヒーローみたいに大げさなパフォーマンスを披露した。 「フフゥン、ビジュアル系弁護士ねえェ。ずい分とカッコいいですねえェ」  被疑者の美少年は肩をすくめ聞き返した。  ヤケに愉しそうだ。 「ああァそうだ。鳴かぬなら裁いてくれようホトトギス。天に代わって お前の罪を!」  シンゴは被疑者の美少年を指差した。  さすが傾奇者と異名を取る織田信長の末裔だ。  派手なパフォーマンスも様になる。  
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