ブラッディフール

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ブラッディフール

「はァ誰がオダマリよ」  すぐさまマリアは立ち上がって突っ込んだ。  無事、自己紹介もおわった。あまり無事とは言い難いが。 「それにキミは、これまで三件すべての事件現場の近くに居たことが防犯カメラなどで確認されているんだ」  さらに刑事のボクは容疑者の美少年を追求した。 「フフゥン、夜の散歩の途中に暴行事件に遭遇したんだよ」  少年はヤケにを強調した。  それを聞いて、すぐ織田マリアが反応した。 「へえェ、《《たまたま》ねえェ。確かに一回ならかもしれないけど、三回ともブラッディ愚者(フール)の事件現場付近を散歩していたって言うのは、ちょっと虫の良い話しじゃん。偶然にしては出来すぎよねえェ。そうでしょ?」  マリアも少年のアリバイに疑問を呈した。 「フフゥン、そうかもしれませんねえェ。でも仕方ないでしょう。ボクだって、犯行現場の近くを散歩したくはないですよ」  被疑者の少年は笑ってごまかした。 「ふぅん、運良くか?」  すかさずシンゴがツッコんだ。 「フフゥン、どっちかって言えばでしょう。まったく冤罪なのにこうして警察に捕まって、朝から晩まで取り調べを受けてるんだ。いい加減、うんざりしてくるよ」  しかし容疑者の少年は笑顔を浮かべ楽しげだ。 「じゃァ、実家(ウチ)に帰って、ゆっくり風呂でも浸かりたいんじゃないのか?」  今度は担当弁護士のシンゴが訊いた。 「まァそうだなァ。誰にも気兼ねなくね」 「あなたでも謙虚って言葉は知ってるようね!」 「そりゃァねえェ」  「だったら住所を教えくれよ。連絡先でも構わないから。キミの実家(ウチ)のご両親だって心配しているだろう。家族だって?」 「フフゥン、言ってるでしょう。ボクに両親なんて居ないさ。天涯孤独でねえェ」  美少年はおどけるように肩をすくめた。 「そうか。それは悪かったな。どっちにしても実家(ウチ)へ帰りたいだろう」  シンゴは()びてからさらに追求した。 「それは地球での実家(ウチ)でしょうか?」
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