自家用のUFO

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自家用のUFO

「それは地球での実家(ウチ)でしょうか」  美少年はおどけたように肩をすくめた。 「はァッなんだよ。ふざけんな。地球外に別荘でもあるのか。月の裏側とかに」  さすがにシンゴも感情的になって皮肉を言った。  これ以上、彼も黙って聞いていられないようだ。苛つきを隠せない。 「別荘ねえェ。フフゥン」  だが少年は思わせぶりに微笑んだ。 「なによ。どっかの裏山に自家用のUFOでも隠してあるの。ボクちゃん?」  マリアは(あざけ)るように美少年を挑発した。 「フフゥン、あいにく自家用のUFOなんてないですよ」 「じゃァあなたのいた母星からどうやって地球へやって来たのよ」 「フフッ、ベガ星からですか」 「そうよ。銀河鉄道かしら?」 「いえ、違いますけどねえェ」  美少年も苦笑いを浮かべた。 「まさかベガ星から散歩の途中に事件現場に出会(でく)わして、ぶらり途中下車したワケじゃないでしょ」 「ええェ、まァそうですねェ」 「ちょっと待った。悪いけどベガ星の話しはまた別の機会にしてくれよ」  堪らずシンゴはマリアの話しを遮った。 「はァなによォ」  マリアは途中で話しを中断され不満げに頬を膨らませた。 「接見の時間も限られているんだ。取り敢えず、今は名前がないと何かと不便だから。キミの名前を教えてくれ。そのベガ星ではなんて呼ばれてたんだ」 「えッベガ星でボクが?」 「ああァそうだよ。キミの名前はなんていうんだ?」  シンゴは繰り返し被疑者の美少年に名前を訊いた。 「フフゥン、教えるのは構わないけど地球人の声帯では発声できないんだ」 「な、じゃァどうやって意志の疎通を図ってたんだ」 「ボクたちベガ星人同士は、テレパシーで認識するんですよ」  美少年は肩をすくめて苦笑した。 「はァ、テレパシーだってェ、ふざけるな。だったら私にテレパシーを送信して来いよ。そしたら信じてやるから」  またマリアはアクリル板に顔をくっつけて喚き散らした。  
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