ベガ星人

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ベガ星人

 またマリアはアクリル板に顔をくっつけて喚き散らした。 「ゴッホン」  すぐに容疑者の背後にいる刑務官が咳払いをした。  さすがに目に余る行為だったのだろう。 「おいおい、マリア。頼むから落ち着いてくれよ。接見禁止になったらヤバいだろう!」  シンゴもボクもなんとかマリアをなだめた。 「ンううゥ……」  マリアも不満げに被疑者の少年を睨みつけて元の席へ腰をおろした。 「フフゥン」その間も美少年は微笑んだまま左右にユラユラと揺れていた。  まったく舐めた態度だ。 「マジでテレパシーなんか使えないんだろう」  シンゴも容疑者の美少年の言葉を信じていないようだ。 「フフゥン、いま現在、このボディでは地球人と同様の能力しかありません。だからテレパシーも超能力も使えませんよ」 「おいおい、そいつは都合の良い話しだな」  シンゴも苦笑いを浮かべたままだ。 「そうよ。じゃァベガ星人だって、証拠もなしに信じろって言うの。私たちに?」  マリアは吐き捨てるように聞き返した。 「ええッそうですね。今のところは」 「わかったよ。じゃァベガ君ってコトで良いか。キミの名前は」 「ハイ、ご自由にどうぞ」 「くぅッ、これは国選弁護人からの助言だ。キミは状況的には窮地に追い込まれているんだ。わかっているのか」  シンゴもかなりナーバスになっているようだ。   「フフッそうですね」  しかし彼はあまり緊迫感を感じない様子だ。ユラユラと揺れたまま笑顔で対応していた。 「まずアリバイがない。これまで三件の事件の付近の防犯カメラにベガ君が映っていたんだ。犯行時刻、現場の近くにいた事は間違いない。そうだろう?」 「ええ、だから困っているんですよ。ボクはただ散歩していただけなのに。気がつくと野次馬といっしょに犯行現場にいて被害者が搬送されるのを見てたんですよ」
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