ベガ星人

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ベガ星人

「だから困っているんですよ。ボクはただ散歩していただけなのに。気がつくと野次馬といっしょに犯行現場にいたんですよ」  しかしベガは揺れながら微笑んだままだ。  口では困ったと言いながらも表情からは困窮したようには見えない。 「あのなァ、じゃァ三件とも言うのか?」  シンゴは眉をひそめて聞き返した。 「ええッそうですよ。全くの偶然ですねえェ!」  美少年はおどけたように肩をすくめ笑顔でうなずいた。 「ふざけるな。ウソつきなさい。そんな偶然なんてあり得ないでしょ。一件や二件ならまだしも。ブラッディ愚者(フール)のやった三件すべての事件に関わっていたなんて」  すぐにマリアもツッコんだ。 「フフゥン、そうですね。でもなんですよ」 「はァウソつきィ。そんな虫の良い偶然なんてあるかァ。それとも真犯人を知ってるの。共犯かなにかなの。ちゃんと本当のことを自供しなさいよ!」  マリアはポンポンと畳み掛けた。 「フフゥン、まさか。真犯人を知ってたらソッコーで刑事さんに報告してますよ。ボクだっていつまでも不自由な留置場生活を送りたいワケじゃないんですからね」  情けなく苦笑した。 「じゃァまず所持品のタロットカードはどうしたんだ」  シンゴはポケットからタロットカードを出して示した。愚者のカードだ。 「さァウチにあったので持ってたんでしょう」 「ふぅん、ねえェ……。この愚者(ザ・フール)のカードだけか?」  愚者のカードを指先で突っついた。 「そうですね。こんなに大ごとになるならタロットカードなんて持ち歩くんじゃなかったですねェ」  他人ごとのように笑顔で応えた。 「同じタロットの愚者(ザ・フール)のカードをたまたま犯行現場にいたキミが持っていたって言うのか?」  シンゴはシリアスな顔で問いただした。 「ええ、恐ろしいものです」 「ふざけるな。ボクちゃんが、派手なキャバ嬢たちを殺してピアスを奪い取った挙げ句、遺体の近くにに愚者(ザ・フール)のカードを置いておいたんじゃないのか!」  またマリアはアクリル板に顔をくっつけて喚いた。
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