ブラッディフール

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ブラッディフール

 またマリアはアクリル板に顔をくっつけて喚いた。 「フフゥン、それじゃァマッチポンプじゃないですか。そんな事しませんよ」  ベガ星人と名乗る美少年は笑みを浮かべ否定した。 「うるさい。ヘラヘラ笑うな。三人も女性が亡くなっているんだぞ。お前のせいで!」  なおもマリアはアクリル板に顔をくっつけ喚き散らした。  また手の平でバンバンとアクリル板を叩いた。 「ボクのせいなんですかァ?」 「おいおい、よせよ。マリア」  ボクとシンゴもマリアを制止するのに必死だ。 「うッううゥ……」  刑務官も気が気でない様子でこっちを伺っていた。今にも立ち上がりそうだ。  このままでは、いつ接見禁止になってもおかしくないだろう。 「フフゥン」  ベガ星人と名乗る美少年だけがただひとり落ち着いて微笑んでいた。  その様子を見て、よけい織田マリアの怒りに油を注ぐことになった。 「だからヘラヘラ笑うなって言ってるんだ。ボクちゃんが連続殺人犯の『ブラッディフール』なんだろう!」  マリアは彼を睨んで決めつけた。 「はァそんなァ、ボクが凶悪な連続殺人犯なんですかァ?」  相変わらずベガ星人と名乗る美少年はユラユラと左右に揺れながら笑っていた。 「そうだよ。ヘラヘラ笑ってキャバ嬢たちに襲いかかり、(なぶ)り殺しにして喜ぶタイプなんだ。お前は!」  マリアはアクリル板越しに指を差した。  そのたびに、ガツッガツッとアクリル板が音を立てた。   「フフゥン、まさか。決めつけは良くないですよ。マリア!」 「はァ、呼び捨てにするな。良くないのはお前だろう。卑劣なブラッディフールのクセにィ!」 「フフッ困ったなァ、シンゴ君。頼むからボクの冤罪を晴らしてください」 「えェッ、オレが?」 「そうですよ。ボクの弁護士なんでしょう。だったらボクの代わりに『ブラッディ愚者(フール)』を捕まえてくださいよ」 「ぬうゥ、代わりに……」 「ええ、まずブラッディフールが過去に起こした三件の事件を洗い直してください」  いつの間にか主導権はカレにあった。 「ンうゥッ、洗い直す……?」
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