ブラッディフール

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ブラッディフール

「ンうゥ…、洗い直す?」  シンゴが聞き返した。 「ええェッこれまでの三件の事件はいずれも金曜の深夜。もしくは土曜日の真夜中に起きています。つまり事件はウィークエンドに集中してますよねェ」  被疑者の少年は楽しそうに事件の考察を述べた。  逮捕されてからずっと考えていたのだろう。  まるで仲の良い友人同士、ミステリードラマの考察を話し合っているようだ。 「ああァ、まァそうだな」  仕方なくシンゴもうなずいた。 「ううゥン……」言われるまでもない。  そんなことは警察だって掴んでいる。 「フン、そんなこと今さら言う事じゃないわ」  織田マリアはふて腐れたようにそっぽを向いた。  ボクもメモを取りながら彼の考察に耳を傾けた。 「おそらくブラッディ・フールは日勤の男性サラリーマン、あるいは公務員でしょう」   「ううゥン、公務員かァ」  シンゴは腕を組んで考え込んだ。 「なによ。それ。ウィークエンドが休みだから?」  マリアはふて腐れたように唇を尖らせた。 「ええェッそうです。入念に犯行現場付近を下見をし、防犯カメラの位置などを確かめ、死角になるところへお目当ての女性を誘い出し殺害したんでしょうねえェ……」  楽しそうに話しを続けた。 「ふぅん、なるほど」  ボクも彼の供述内容をメモにした。  だがマリアは首を横に振って舌打ちをした。 「チィッそれは、そうかもしれないけど…。そんな事を言うなら犯人は学生かもしれないじゃん。それともボクちゃんみたいなプーかもしれないじゃん」  シリアスな顔で知恵を絞った。 「フフッ、やはりマリアの疑いを晴らすためには、早急に事件を解決してもらわないといけないようですね」  明らかに美少年は迷惑そうだ。 「なによォ。また呼び捨てェ。ボクちゃんのクセして生意気に!」  またマリアがアクリル板に突っかかった。 「おいおい」  あまり叩くと、アクリル板が壊れないか心配になってくる。 「……」  刑務官も気が気じゃない様子だ。 「フフゥン、よろしくお願いしますよ。シンゴ君!」  のけぞるように避けながら苦笑した。   「ンッオレに?」  シンゴは眉をひそめた。 「そうですよ。今のボクを(たす)けだせるのはシンゴ君だけなんですからね」  相変わらず被疑者の少年はユラユラと揺れながら微笑んでいた。
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