回復魔法

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回復魔法

「今のボクを助け出せるのはシンゴ君だけですからね」  相変わらず被疑者の少年はユラユラと揺れながら微笑んでいた。 「……」まったく反省の色が見えない。  こんな調子で公判に望めば、裁判官や一般の裁判員らの心証が悪いだろう。  最悪、極刑の可能性もある。  笑っている場合ではない。 「あと少し時間があれば、蘇がえらせる事ができたのにあの警官さえ邪魔をしなければ」  少年は少し顔色を曇らせた。笑顔が消えて本当に悔しそうだ。 「だから警官と揉み合いになって現行犯逮捕されたって言うのか?」  シンゴが鋭く聞き返した。 「ええ、そうですねえェ。残念ですが」  さすがに彼も笑っていない。 「ウソつけェ。回復魔法か。ヒーラーなの。ボクちゃんよォ。ハリーポッターか異世界モノか何かを読みすぎよ!」  マリアはなおも不信の眼差しで美少年を睨んだ。 「フフゥン、別にヒーラーってワケじゃないけど」  また美少年は肩をすくめ苦笑いを浮かべた。 「ふざけるな。自分で被害者の彼女を刺したクセに回復なんてできるか。いっくら宇宙人でもねェ」  (はな)からマリアは信じようとしない。 「まァ普通の状態ではねェ」 「なんだよ。さっきは地球人の身体じゃァ、テレパシーみたいな特殊な超能力は使えないって言ってただろう」  今度はシンゴがツッコんだ。
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