シンゴ

1/1
前へ
/30ページ
次へ

シンゴ

 取り敢えずタイムリミットまで接見したが、堂々めぐりの状態だ。  彼が真実を言っているのか、わからない。  シンゴは容疑者の少年の目を見つめた。  真剣な眼差しだ。 「信じても良いんだな。キミは女性3人の暴行殺人事件に関わっていないと!」  さらに確認をした。 「ええェ、もちろんですよ」  美少年は屈託のない笑顔でうなずいた。 「だけど三件とも犯行現場の近くにいたって言うのが偶然にしては出来すぎでしょ」  またしてもマリアはクレームをつけた。 「フフゥン、そうは言っても」  彼は笑って言葉を濁した。 「もしかしてキミはある程度、容疑者を特定していたんじゃないのか。だからその容疑者を尾行していたんだろう?」  シンゴが追求した。  確かに、それならば犯行現場の近くに居たことの説明がつくだろう。 「まさか。だったら取り調べで真犯人を答えてますよ。ボクだって不自由な留置場暮らしは嫌ですからね」  相変わらずユラユラ揺れながら微笑んだ。 「ふぅん、ずい分、楽しそうに見えるけどな」  シンゴはイヤミを言った。 「フフゥン、まさか。できればこのままシンゴたちと一緒に帰りたいですよ」  ベガ星人は笑顔で応えた。  しかしすぐさまマリアが口を挟んだ。 「あのねェ、だったらもうちょっとマジに応えなさいよ。あんたの態度を見てるとこっちまでイライラしてくるわ」  また立ち上がりアクリル板に顔をくっつけた。 「フフゥン、マジですよ。これでも」     「わかったよ。今日のところは引き上げよう」  さすがに敏腕弁護士のシンゴもお手上げみたいだ。  これ以上は聞き出せそうにない。 「なんだ。寂しいな。せっかく地球で初めて親友ができたのに」  美少年は残念そうに笑みを浮かべた。 「ふぅん、初めての親友ねえェ。ボクを親友と呼んでくれるのか?」  シンゴは肩をすくめ苦笑した。 「ええェ、もちろんですよ。シンゴ君!」  彼はヤケに楽しそうな顔で応えた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加