メサイアゲーム

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メサイアゲーム

「チェスでも将棋でも囲碁でも勝負事は実力に差があり過ぎては面白くないでしょう。ライバルと実力が拮抗(きっこう)してないとゲームが盛り上がらないじゃん?」  笑う宇宙人は楽しげに微笑んだ。 「なにィゲームだとォ?」  またシンゴは眉をひそめ睨んだ。  すぐさまマリアが噛みついた。 「バァカ、これはゲームじゃないんだぞ。実際、何人も女性が亡くなっているんだ。わかってんのかァ!」  アクリル板に顔をくっつけバンバンと叩いた。 「フフゥン、ええェ、わかってますよ。『メサイア』ですからね」  笑う宇宙人も立ち上がって引き上げていく。 「えェ、『メサイア』…って。なんなんだ。それは?」  すぐさまシンゴも立ち上がって聞き返した。あまり聞き慣れない言葉だ。 「フフゥン、『メサイア・ゲーム』ですよ」  笑う宇宙人は去り際に振り返り笑みを浮かべた。 「な、おい、ベガ。待てよ。『メサイア・ゲーム』って、なんだ。おいッ、ちょっと待てって?」  今度はシンゴがアクリル板に顔をくっつけ叩いた。 「ぬウゥ」また刑務官が嫌な顔をしてこっちを睨んだ。 「フフッ、シンゴ。いつか二人だけでゲームの続きをやろうぜ。『メサイアゲーム』を。フッハハハハ……!」  メサイアゲームと言うナゾの言葉を残し、『笑う宇宙人』は拘置所の中へ消えていった。 「チィッ」シンゴは舌打ちをした。  なんとも後味の悪い感じだ。      ちなみに『メサイア』とは、ヘブライ語のメシアの英語読みで、救世主と言う意味だ。  『メサイアゲーム』という事は救世主ゲームと言う事だ。  果たして救世主とは誰のことなのか。  笑う宇宙人なのか。  それとも。
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