ブラッディフール

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ブラッディフール

「ぬウゥ、いいか、良く聞けよ。宇宙から来たはブラッディフールの事件が起きた犯行現場の防犯カメラに映っていたんだ」  けれども鰐口警部補が吐き捨てるように説明をした。  と言うことをヤケに強調した。  まだ警部補は『笑う宇宙人』が真犯人だと疑っているようだ。 「ふぅん、だけど偶然だってさァ。あの『笑う宇宙人』が言うには」  マリアはそっぽを向いて応えた。もちろんマリアも宇宙人の言葉など信じていない。 「おいおい、確かに一件や二件なら偶然かもしれないが『三件』だぜ。絶対にそんなことはないだろう」  鰐口警部補ももっともな事を言った。 「そりゃァ私たちだっておかしいと思うわよ」  マリアも口を尖らせたものの異論はない。   「だけど確率的にはゼロではないでしょ。特に横浜市近郊に住んでいればね」  シンゴは苦笑した。 「バカ言ってろよ。限りなくゼロに近いけどな。それに問題のタロットカードだ」  鰐口警部補は少し苛ついた感じだ。  おそらく喫煙スペースへ行く途中なのだろう。 「ふぅん、愚者(ザ・フール)のカードですか?」  シンゴが腕を組んで聞き返した。 「ああァそうだ。財布の中には愚者(ザ・フール)のタロットカードがあったんだ。これまでと同じメーカーのタロットカードだ。もちろんマスコミにはメーカー名は伏せてあるがなァ!」 「なるほどね。それが決め手ですか」 「それと財布の中にあった五百万円の札束だ」 「その五百万の出どころは?」 「さァな。宇宙から来たは怪しい金じゃないって断言していたがなァ。そもそも、そんな現金を持ち歩いていること自体(じたい)、怪しいだろう」  鰐口警部補の主張ももっともだ。 「そうねえェ、どう考えても怪しいわ。犯罪のニオイがプンプンしてくるわよ。臭い、臭い!」  マリアは実際に鼻をつまんだ。 「ううゥン……」シンゴは腕を組んだ。  確かに状況証拠ではあるが、これだけ出てくれば起訴できるかもしれない。  少なくとも公判は維持できるだろう。   「じゃァ現行犯として捕まえた警察官に詳しい事情を伺いたいんですけど」  シンゴは鰐口警部補に少し歩み寄って耳打ちをした。  弁護士がこんな事を頼めるのは鰐口警部補くらいだ。
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