ブラッディフール

1/1
前へ
/30ページ
次へ

ブラッディフール

『離せェ。邪魔をするんじゃねえェ!』  なおも男性は暴れようとした。  暴れながらも女性の胸から手を離そうとしない。 『ぬウゥ、ブラッディフールだァ。ブラッディフールを逮捕したぞォ!』  犬野巡査は背後から男の首に腕を絡めて大声で絶叫した。 『ボクはブラッディフールじゃない。いま、彼女を助けているんだ。邪魔をするなァ!』  美少年と犬野巡査はもつれ合うように喚き散らした。  だが、犬野巡査のチョークスリーパーが決まり美少年は息も絶え絶えだ。  その頃、ようやくパトカーのサイレンが聞こえた。  警察の援軍が来たようだ。  こうして犬野巡査は公務執行妨害で美少年を逮捕した。  被害者の女性は横浜市在住の風俗嬢、前田レイカ、24歳と判明した。  今のところ被害者の風俗嬢たちには特別な繋がりはない。  金髪、もしくは明るい茶髪で派手な化粧をしている事を除けば関係はないようだ。  犬野巡査の話しは以上だ。  調書で読んだ通りだった。取り立てて新情報はない。これまでの事を確認したに過ぎない。 「ふぅん、つまらない。そんな話しを聞きたかったワケじゃないわ」  織田マリアは不満げな顔だ。まったく身勝手な女の子だ。 「はァ、すみません。面白くない話しで!」  犬野巡査も恐縮至極だ。すぐさま頭を下げた。 「いえ、じゃァあいつは、『笑う宇宙人』は激しく抵抗したんですね」  またシンゴは確認をした。  公務執行妨害として彼は緊急逮捕された。   「ええ、さんざんですよ。帰ってから風呂に入ったらキズやアザだらけでしたからねえェ」  犬野巡査も激しい格闘の痕跡を見せた。  まだ腕には生々しくアザやキズが残っていた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加