ブラッディフール

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ブラッディフール

「ですが…、もしかしてベガ星人は、被害者女性を救護していたんじゃないですか?」  シンゴは被疑者をかばって弁護した。 「えェ、救護ですか?」  けれども犬野巡査は信じられない顔だ。 「おいおい、シンゴ君!」  ボクも素直に賛成できない。  なにしろ『笑う宇宙人』は、現行犯で捕まっているのだ。 「そうです。彼は女性の刺された傷口に手を当てて(パワー)を送っていたと言うんです」  シンゴはベガ星人から聞いた話しをそのまま伝えた。 「パワーを。そんなバカな?」  巡査は首を左右に振って信じられないようだ。 「ええェ、バカな事です。ですがあのとき、あなたに邪魔されなければ彼女を生き返らせたと言っているんですよ」 「そんな蘇生術…。あるわけがない。異世界転生モノのアニメか漫画を見すぎですよ」  巡査も首を横に振って信じようとしない。 「ええェ、ボクたちもそう思っています。でも思い起こしてください」 「えェ?」 「彼は被疑者の胸を揉んでいたワケじゃないでしょう。被疑者の傷口を手で押さえていただけでしょ。そして呪文を(とな)えていた」 「それは、ンうゥ……」  巡査も懸命に思い返していた。   「それにあいにく彼が性的暴行をした痕跡はないんですよ」 「ううゥ……」 「こういう事は考えられませんか?」 「えェ、どういう事ですか?」  すぐに犬野巡査が聞き返した。 「ブラッディフールは別にいたんです。理由は、不明ですがブラッディフールは派手な身なりの風俗嬢に怨みを抱いていた。そこでウィークエンド、次々と風俗嬢を襲って拉致し、近くの多目的トイレへ連れ込んで暴行し殺害したんです」 「ですから。そのブラッディフールが彼なんでしょう。だから彼は何度も犯行現場の防犯カメラに映っていたんじゃないですか?」  犬野巡査の言うことももっともだ。
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