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ボクは宇宙人なんですよ
「フッフフ、絶対に秘密だよ」
勾留中の被疑者は楽しそうにニコニコと微笑んだ。
小学生のように無邪気な笑顔だ。
内緒ばなしをするように少し前かがみになった。
日焼けしたことがないのだろうか。透き通るほど肌が白い美少年だ。
多少、耳の先が尖っていた。あまり見たことのない特徴的な耳の形だ。
美少年はなぜか、他人を小バカにするように椅子に腰掛けながらユラユラと左右に揺れていた。
落ち着きのない子供のようだ。
無意識なのか。それともボクたちを苛つかせようとワザとやっているのだろうか。
「ムゥッ!」
この美少年の態度を見ていると無性に腹が立ってきた。
明らかにボクやシンゴ君よりも年下なのに舐めた態度だ。
ここは接見するための面会室で、被疑者と弁護側との間は透明のアクリル板で仕切られていた。
面会室には被疑者の美少年と弁護側に三人の男女が向かい合って座っていた。
もう一人、被疑者の側には刑務官が控えていた。
メガネを掛けた実直そうな男性だ。
お目付け役のようにこちらに目を光らせていた。
こちら側には三人いるが被疑者の美少年はビジュアル系弁護士のシンゴしか見ていないようだ。
「ああァ、もちろんさァ。秘密は守るよ」
派手な格好の織田シンゴだ。
彼は苦笑いを浮かべうなずいた。
とてもではないが、こちらも担当の国選弁護士のようには見えない。
ロン毛の金髪でビジュアル系ロックミュージシャンのような格好をしていた。
六法全書よりはエレキギターを持っていた方がずっとお似合いだ。
実際、彼はビジュアル系バンド『ワイルドプリンス』のギター&ボーカルをしている。
「マジで?」
なおも被疑者の美少年は疑っているようだ。
「フフゥン、安心してくれよ。一応これでも弁護士なんだ。当然だが国選とはいえ守秘義務があるからね」
続けて彼はウインクをして請け負った。
彼は被疑者の少年の国選弁護人だ。
胸にはひまわりのバッチが輝いていた。弁護士バッチをつけてなければ、およそ弁護士には見えないだろう。
「実を言うと……、フフッ」
被疑者の美少年はヤケに勿体つけるみたいに笑ってみせた。
まるでボクたちを試すようだ。
「ああァ、なんだい?」
弁護士のシンゴは真面目にうなずいて聞いていた。
「……」
ボクも身を乗り出し聞き耳を立てた。
「フフゥン、ボクは宇宙人なんですよ」
美少年は椅子に腰掛けたままユラユラと左右に揺れながら微笑んだ。
「えェッ、なんだってェ?」
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