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ボクは宇宙人
彼女は女子高生アイドルで自称、天才ミステリー作家という触れ込みだ。
勝手に弁護士のシンゴの助手を買って出ていた。
ただしアイドルと言っても、全く無名の売れないインディーズの地下アイドルだ。
「まァまァマリア。頼むから落ち着いて」
弁護士のシンゴと刑事のボクは、すぐさまマリアをなだめた。
彼女のご機嫌取りに必死だ。
しかしここで問題を起こしては接見禁止になりかねない。
もう少し自重して欲しいモノだ。
「フフゥン、頼みますよ。ボクは暴力沙汰は苦手なんですから」
しかし美少年は笑顔を浮かべたまま何事もないようにユラユラと揺れていた。
相変わらず、弁護側からだとフザケているようにしか見えない。
「あのねェ。ボクちゃん。女性を三人も殺しておいて、暴力沙汰が苦手もクソもねえェだろう」
なおもマリアはアクリル板に顔をくっつけケンカ腰だ。
拳を振り上げていた。
間にアクリル板がなければ、今にも殴りつけていきそうだ。
「はァ」
しかし被疑者の美少年は他人事のようだ。
相変わらず笑みを浮かべたまま左右に身体を揺らしていた。
「って、おい聞いてるのかァ。ブラッディ愚者!」
織田マリアはアクリル板に顔をくっつけたまま、そのアクリル板をバンバン叩いた。
「ちょっ、ちょっと……」
さすがに被疑者側にいる刑務官も立ち上がりかけ、こちらに目をやって睨んだ。
「まァまァマリア。そんなにイキり立たないで。接見禁止になるからこれ以上、事を荒だてないでくれよ」
弁護士のシンゴもなんとかマリアをなだめた。
「マッマリアさん」
ボクも心中穏やかではない。
すでにイエローカードは出ている状態だ。
いつレッドカードを突きつけられて退場を命じられてもおかしくない。
「ぬううゥ……」
しかし織田マリアはまだ気が収まらない様子だ。
アクリル板に顔をくっつけたまま唸っていた。
「頼むから落ち着いてくださいよ」
ボクもマリアを抑えるのに懸命だ。
ようやく彼女をなだめて席に着かせた。
「フフゥン、お願いしますよ。そんな短気を起こさないで。ボクも真面目に弁護してもらわないと困りますからね」
けれども被疑者の美少年は相変わらず微笑んだままだ。
まるでこっちをからかうようにユラユラ揺れながら笑っていた。
どちらかといえば、こちらを挑発するような態度だ。
「なんだとォ、お前の方こそ真面目な態度を示せよ」
また織田マリアは腰を上げて掴みかからんばかりだ。
アクリル板が隔ててなければ、とっくに殴りつけているところだろう。
「おいおい」
気が短くて、いつもこっちがハラハラしてしまう。
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