セフレのふりじゃない(紺野side)

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セフレのふりじゃない(紺野side)

朝、水野が沢井さんのそばにやって来た。 「おはよ。昨日は先に帰っちゃったからビックリしたよ。」 朝から水野は沢井さんに馴れ馴れしい。 「ごめんなさい…。」 困ったような顔の沢井さんの表情がやけに気になった。 「今度はいつ会える?」 当たり前のように詰め寄る水野に俺はなぜか苛立つ。 「え?あの…。」 「俺たち、そう言うことでいいんだよね?だろ?」 水野が沢井さんの肩に触れたのがカチンときた。もう、沢井さんは俺のものじゃないって言うのに。 「え?」 「だからさ…。俺たち、付き合ってるって事でいいんだよな?」 「いや、えっと…。」 沢井さん、困ってる。 「え?俺、昨日から彼氏ってことでいいんだよね?」 水野が彼氏だなんて言った。 体が前のめりになってる。 嬉しそうに微笑んで。 「嬉しいよ。万由ちゃん。俺、彼氏だなんて嬉しい。」 「ごめんなさい。そうじゃないの。 あたし…。」 なんだ、やっぱり沢井さん困ってんじゃん… って。 ホッとしてる俺がいる…。 「え?」 水野がびっくりした顔で沢井さんを見た。 「水野君とは…付き合えない…。」 「え?」 信じられないと言う顔で水野が沢井さんを見てる。 「ごめんなさい。あたし…。」 「なんで?僕のこと、好きじゃない?」 もう、見てらんない。 俺は勢いよく二人に近づいていった。 「水野、残念だけど悪いな。 沢井さんは俺のセフレだから。」 なんだか必死な俺がいた。 「え?なんだって?セフレってさ…」 水野が驚いた顔で沢井さんを見た。 「だからゴメンな。諦めろ水野…。」 「なん、なんだよ。 それならそうと先に言ってくれよ。 すでに沢井さんまでお前のお手付きだったとは知らなかったよ。 だけど意外だな。沢井さんがセフレとか、そんなことするなんて。」 ヘラヘラと笑いながら水野は去っていく。俺はホッとして大きく深呼吸なんかしてる。 「なんで水野君にあんなこと言ったの?」 沢井さんが俺を睨んできた。余計なお世話だって顔してる。 「だってなんか、嫌そうだったじゃん、アイツのこと。だから追い払ってやっただけ。これでよかったろ?」 なんとかそれらしいことを言い繕った。 「ありがとうなんて言わないから。」 そう言って口を尖らしてる沢井さんが可愛いなんて思ってる俺はどこかおかしいんだろうか…。 「いいよ、お礼なんか言わなくて。 だけど彼氏がいるならもう、そんなことすんなよ。 もっと自分を大事にしろって。」 「それ、紺野君に言われたくない。」 「何でだよ、だって沢井さんはそんな人じゃなかっただろ?」 「紺野君に何がわかるのよ。」 「わかるよ。 あんなに好きだったんだから…。」 思わず本音が洩れた。 「え?」 「いや、なんでもない。」 「あーあ。水野くんはあたしのセフレだったのに…。」 「なんだよそれ。 まさか、アイツと本当に寝たの?」 「寝たよ。悪い?」 うそだろ…、なぜかすごくショックを受けてる。 「沢井さん、どうしちゃったんだよ、彼氏がいるんだろ?沢井さんにはさ。 こんなの、沢井さんらしくない。 俺がどんな想いで…。」 「紺野君に何がわかるのよ。 紺野君だけには言われたくない。 女たらしの癖に。」 沢井さんはそのまま俺の前を去っていった。 そうなったのは誰のせいだよ…。
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