セフレのふりじゃない(紺野side)

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そんなことがあった数日後。 会社で飲み会をすることになった。 若手のみんなで懇親会と称した飲み会。 幹事だった水野は何人かの派遣の人たちにも声をかけた。そうしてちゃっかり性懲りもなく沢井さんの隣に居座ろうとした。 だから俺はまた、沢井さんは俺のセフレなんだから手を出すなって言って水野を追い払ってやった。 ホントしぶといやつめ。 お前なんかに沢井さんはやらない。 いつもみたいに小畑さんや鎌田さんが俺に近づいてきたけど、今日は沢井さんにすると言って軽くあしらってやった。彼女らはきっといつものお遊びだとかそんな事だと思ってるんだろうな。 俺が実は沢井さんにマジだなんてきっと思ってもいないだろう。 はっきりこのあいだ断ったウルちゃんは様子を窺ってるからか俺のところに近づいてこなかった。 ウルちゃんだけは多分気づいてる。 俺が沢井さんにマジだってこと…。 * 「今日は私のこと抱かないんですね…」 「今日は、帰るよ…」 ちっとも酔ってなんかいなかったウルちゃんを家まで送り届けてそのまま帰ってきた…。 その日は雨が降ってた。ウルちゃんと同行した営業先で仕事のあと相手の担当者たちの接待して取引先のお偉いさんに結構酒を飲まされたからウルちゃんがかなり酔っ払ってた…ように、見えた。 酔ってるし傘もないから家まで送ってとそんなウルちゃんに頼まれて家まで送ってあげた。 終電が無くなったから俺はタクシーで帰ろうとしたら、腕を掴まれて今日は泊まっていけとしきりにそう言われた。 以前にも酔って転がり混んだことがあったから。その時俺は酔った勢いでウルちゃんに誘惑され、ウルちゃんを抱いた事があった。 あの頃の俺は特定の恋人を作らないと決めていたから随分好き放題やってたし。 ずっと俺はこの先もそうやって適当に生きていくとつい最近までそう思ってた。 沢井さんが俺の目の前に現れるまでは…。 だけど何の運命のイタズラか、俺たちは再会してしまった…。 そして気づいてしまった…。 やっぱり俺、まだ沢井さんが好きみたいだ…。 俺の噂なんかもうとっくにみんなに広まってる。すっかり落ちぶれてしまったそんな俺の姿なんか沢井さんに見られたくなかったのに。時すでに遅しだ。 沢井さんは俺を女たらしだと思ってる。否定はしない。実際そうだったんだから。だけどさ…。 「今日は帰るよ…」 玄関先まで送った俺がウルちゃんにそう告げるとウルちゃんは急に正気に戻った。 なんだよ、そんなに酔ってないんじゃん… 「え?なんで?」 ウルちゃんが眉間にシワを寄せて作り笑いしてる。 「ごめん、俺、前も言ったけど。ウルちゃんとは付き合えないよ?」 「わかってるよ?いいじゃん、前みたいに時々相手してくれるだけでいいよ?あたしたち前みたいに気楽に楽しもうよ。」 「うん、でも今日はやめておく…」 「え?うそ、なんで?なんか紺野さんらしくないね。どうしたの?なんか、最近変わったね…」 俺らしくない? 俺だってそう思ってる。 「そうかな…」 なんて言ってる自分に俺がいま一番そう言ってやりたい。 「それってもしかしてあの人のせい?」 不安そうな目でウルちゃんが俺に真剣に聞いてきた。 「え…?」 「ほら、最近入った派遣さん…」 「え?なんで?」 誤魔化すみたいに笑う顔が自分でもぎこちない。 「だって、二人とも気がつくとお互いを目で追ってるよね?」 まっすぐウルちゃんの目が俺を見てくる。
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