拗れたもの同士

1/2
前へ
/33ページ
次へ

拗れたもの同士

どうしようもないほど、やっぱり私は紺野君がこんなにも好きだった。 二人とも酔ったせいなのかもしれない。 そんな雰囲気にのまれていただけなのかもしれない。 知らず知らずのうちに酔った私は介抱される彼の腕のなかに抱き締められていた。 目と目があった瞬間になにかのスイッチが入った。 それを拒めば出来たはずなのに。 その愛おしい手を振り払うことが出来なかった。 職場の飲み会のあと。 水野君に絡まれた私を助けてくれた彼に肩をだかれ、泥酔した私は気がついたらホテルにいた。 「気がついた? 全然目を覚まさないし歩けないみたいだったから。 別になにもしないから安心してよ。 どうせ、俺なんかに抱かれたくないんだろ?」 彼は私にそういったけど。 「あたしのセフレになってくれるんでしょ? 構わない。 いいよ。私を好きに抱いて。 今日だけしてあげる、紺野君の相手」 酔った勢いもあったのかもしれない。強がっていたのかもしれない。 そんなことを言ってた。 本当はどうしようもないくらい好きなくせに。彼に優しくして欲しかったくせに、そんな風に強がってた。 恐る恐る延びてくる彼の戸惑う手に触れられた私の心も戸惑いながら静かにそれを待ちわびていた。 無言のまま、真剣な眼差しが私を見てくる。 その無表情な心の中を図り知ることなど出来ない。 彼は遊びで女を抱く。 きっと私の事もそうなんだ。 その中の一人だ。 もう、それでも構わない。 指先が近づいて来るのを待っている私の肌が燃えるように熱い。 彼のその指先が触れたその瞬間にその場所から何かがわきたつような感覚が徐々に波紋のようにからだ全体に広がっていく。 魂が震えるなんていうことがあるのだとしたら、多分今この瞬間なのかもしれない。お腹のそこから沸き上がるような想いが私を支配し身震いにも似た衝動に駈られている。 早く私を抱き締めてほしい… そんな私の心の中を知られたくなんかないから。また心にもないことを口先が語りだす。 「でも勘違いしないでよね?紺野君はあたしの遊び相手の中のただの一人なんだから…。今日だけだよ。遊ばせてあげるの。」 彼にそう言った言葉は、きっと私が私自身に言い聞かせている言葉だ。 どうせ私は遊び相手の一人なんだから…。 紺野君とは本気になんかならない。 紺野君がそのつもりなら、もうそれでもいい。 こうして会えるなら。 もう、セフレでもなんでもいい。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加