今でも俺は…(紺野side)

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やんわり断るつもりで言った言葉が形を変えて相手に届き、彼女たちはそんな俺を誘惑してきた。 そんな誘惑に負けてしまう俺は所詮、単なるオスなんだと今さら自覚する。 恋人がいなくたって、したいことはしたいし、好意を寄せられるのは嫌じゃない。 それでもいつか、本気になれる人が見つかるかもしれない。 そんな思いで毎日俺は彷徨っていた。 特定の恋人を持たない俺は、そんな風に近づいてくる女の子と過ごす適度な距離がちょうどよかった。 お互いに誰にもしばられず。誰のものにもならない。 相手も俺もそんな関係を持ちたがったし、お互いにちょうどいい距離感だった。 だけど、噂ってやつは厄介で怖い。 いつも相手から迫られたはずの俺は、いつのまにか俺から誘ったことになっていた。 ワンナイトならいい。 相手からそう言ってきたくせに、次の日には俺から言ったことになってた。 俺にとっての断り文句はいつしか俺のトレードマークのようになっていった。 もう、それならそれでいい。 それ以来、俺を自分の物にしようなんて考える人がいなくなったんだから。 そうだ、それでいい。 どうせ俺は誰とも本気で付き合えないんだから…。 俺はきっとこの先も誰のものにもならない…。 そんな噂は俺にとってまさに都合がよかった。 お互いに本気にならなくて済むなら、それでいい。俺はワンナイトしかしない奴だって広まってくれれば、本気で付き合わなくて済むから。 そうしたら相手を傷つけることもないし、俺も傷つかなくて済むんだら…。 いつしか俺はみんなが思い描くようなそんな男を演じた。そうしている方が気がきっと楽だったから。 最初からそう言っておけば。 そんな噂が流れていれば、自分でそんな風に言う必要もなくなる。 もうこれならこの先も俺は誰も傷つけないし、俺自身も傷つかない。 ずっと、そんな風に思ってた…
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