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元カレ
今一番会いたくない人が私のすぐ目の前にいる。
元彼とはお別れしたはずだった。
連絡先も消したし、勤め先も変えた。
なのにどうして?
夕方、オフィスのビルのエントランスの前に立っていたのは、前の職場で付き合ってた元彼だった。
どこで誰から何を聞いたのか、オフィスの入り口で私を待ち伏せしてた。
「え?どうしてここにいるの?」
「万由ちゃん、俺に内緒で急に会社辞めちゃうし、引っ越しちゃうからさ、随分探したよ。」
「もう、会わないって言ったのに…。
別れたじゃない、あたしたち。」
「もう一回、やり直せないかな…」
「ごめんなさい…。」
「なんで?どうして?
俺は将来まで考えてたのに。」
「ごめんなさい、あなたとは私の将来が見えなかった。」
「そんなのこらからゆっくり二人で…」
「ホントごめんなさい。」
「そんなこと言うなよ。」
「離して。」
「ちょっと待ってよ、もう一回ちゃんと話そ?」
「話すことなんかもう無い。」
「待てって。なんか俺悪いことした?」
「違うの、私の問題だから…。離して。」
付き合っていた時は嬉しかったその私への執着も、こうなってしまうと不快にしか思えないし、ここまでくると恐怖でしかない。
彼に対して好意的だった時にはその彼の強引さやしつこさも私への愛情に思えていたけれど、いまとなってはこんな状況にある彼がなんだかストーカーのように見えてきてしまうから不思議だ…。
彼を特別好きだったわけじゃない。
私を好きだと言ってくれるその気持ちが嬉しかったから。
けれどそんな気持ちでは、やっぱり長くは続かなかった…。
身勝手な私が撒いた種だ。刈り取るのも私自身。だけどどう刈り取っていいのかわからない。
「俺、なんか悪いとこあるなら直すからさ」
「そうじゃないの。悪いのは私の方だから…」
そうしていると向こうから紺野君がやって来た。
「沢井さん、どうしたの?大丈夫?」
「……」
「彼女に何のよう?失礼ですけどあなたは?」
「俺は…、彼女の恋人だよ。」
その事を否定しなかったのは、紺野くんの前だから。こうなった原因の張本人…。
「なんか、その割りにはすごくいやがってるように見えましたけど?」
「なんか君、失礼だな。」
「見たまんま言っただけだし。」
「何なんだよ。君は」
「俺?俺は彼女の同僚の…」
「彼は…私のセフレだけど?」
「は???
セ…?セフレだって??
そんなわけ無いだろ?
そんな…。」
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