派遣先の人気者の彼は

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お節介な情報通の中村さんが訊いてもいないのにいろんなことを私に教えてくれる。 だから絶対にそんな中村さんには言えないの。 職場の誰にもあの頃の事は言わない。 あの彼と学生時代、あんな風に過ごしたこと…。 彼を好きだったこと…。 今でも、多分…、好きなこと…。 「人気者の彼にだけは気をつけてね。近づいたらすぐに手を出されてお持ち帰りされるらしいからね。二人でお食事なんかしたら、もれなくお持ち帰りだって噂よ?」 中村さんが私に何度もそう念を押した。 けれどなぜか彼は私のことなんか知らない人みたいな態度だったし、まるで私になんか興味がない様子。 っていうか、避けてる? なんか、身構えてたせいか…。 拍子抜けした…。 それにいつも彼のそばには素敵な女性社員が何人もいて。相変わらず昔みたいに囲まれてキラキラしてる。 とても彼の方から誰彼構わず手をだしてもれなくお持ち帰りするようには到底見えなかった。 どちらかと言うと、周りの人たちが勝手に寄ってきて、彼を放って置かないようにさえ見えた。 手を出されたって周りに言いたい女性たちの見栄なんじゃないかって、そんな気がした。 好きだった彼のことを贔屓目で見ている感も否めないけれど…。 まあ、真相はわからないし? 確かめる術もないし? そもそも私には関係ないし? 派遣社員の私なんか、正社員の彼と話すことも無かったし、あの輪に割り言って話す勇気もない。 今さらあたしなんかと話すこともないし?会ってそもそもどうするの? そうして私はまた、下を向く。 彼との思い出は、私の胸にそっと仕舞っておくと決めた。
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