女同士

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女同士

定時になると、紺野くんの周りには綺麗な女性社員が近づいていき、何人かで楽しそうに話を始める。 どうやら今日はこのあと飲みに行くらしい。 きゃっきゃと楽しそうな笑い声。 噂の紺野君は、あの中の誰を今日はお持ち帰りするんだろ。 女性社員がほかの女性社員にも声をかけてる。 「ウルちゃんも誘った方がいいんじゃない?」 神木麗流ちゃんはとても可愛い営業の女の子だ。麗流(ウル)ちゃんは彼のことがどうやら好きらしい。 一度お持ち帰りされたと噂されているけれど、どうやら本命の彼女なわけではないみたいだ。 みんなあんなに噂されてるのに、平気でこうやって彼を誘うんだ…。 気楽にワンナイトなんて、私は絶対出来ないや。例えそれがあんなに好きだった紺野くんであっても…。 「ウルちゃんがきたら、またウルちゃんに持ってかれちゃうじゃん…」 小畑さんが鎌田さんに言ったのが聞こえてしまった。 小畑さんは見るからに肉食系女子で、すごく気が強い。私はどっちかって言うと苦手なタイプだ。 いつもそばにいる鎌田さんは小畑さんに逆らえないから、いつも話をうまく合わせてる。本当によくやってる。とても真似できない。 二人とも黙ってれば美人なのに二人が揃うと口を開けば不満と陰口ばかり。なんだかすごくもったいない。 私が身の回りを片付けて帰る支度を始めると、その小畑さんに呼び止められた。 「あ、派遣さん、このデータ、ダウンロードしておいてくれない?それから型の古い順に並べかえてPDFに一つに纏めてわかるようにファイルしといて」 帰り際にこれだ。 今からやったら三十分はかかりそうだ。今日は早く帰るつもりでいたのに。バスの時刻がずれて結局一時間のロスだ。 「はい。わかりました」 「悪いね。でも、派遣さんは時間外は割り増しだもんね?」 別に嬉しくない。 派遣だって出来れば定時で帰りたい。 そう思っても口には出さないけど。 「あれ?紺野くんどこ行った?」 小畑さんが鎌田さんに訊いたら鎌田さんが残念そうな顔して言った。 「あ、さっき部長に呼ばれて上行った」 「え、そうなの?まだ話途中だったのに。あとで店、伝えればいいか。」 そこにウルちゃんが帰ってきた。 「おつかれー」 「あ、お疲れ」 「ほんと、疲れた。今日このあとどっか飲み行来ません?」 ウルちゃんがそう声をかけると二人が気まずそうな顔をした。 「ゴメン、今日は用事あるわー。」 残念そうな顔をして断り小畑さんがチラッと鎌田さんを見た。 「あたしもだー」 鎌田さんも小畑さんに目配せしてる。 「そっか。残念」 ウルちゃんが軽く返事をして給湯室に向かう。 女同士の世界は怖い。
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