綴った思い出

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私は家路に就いていた。 今は陽が沈むのが遅い夏。6時半を過ぎたのに、まだ辺りは明るかった。 すると目に入った可愛い看板。『Anemone』と書かれてある。 「アネモネ………。可愛い。寄っていこうかな」 アネモネは私が一番好きな花だ。 だからなのかわからないけど、アネモネと聞くとついつい興味を持ってしまう。 ーーりりん。 ドアの上に付いている鈴が小さな音を鳴らした。 「いらっしゃいませー……。え?え、ちょ、ちょっと待ってください!」 カウンターにいた女性が急に慌て出した。 もう閉店時間だっただろうか。謝って出ていこうとするとーーー。 「なに、姉さん?」 どこからか男の人の声がした。 「あの人、違う?」 「んー?」 エプロンを結びながらこちらを向く男性。 するとその人の瞳が大きく見開かれた。 ………なに? 「その反応は合ってる?すごいでしょ、感謝しなさいよ。………って柊都(しゅうと)?あ、やばい。おぉーい!!」 カウンターにいた女性が驚いて固まってしまった男性の目の前で手を振る。 すると、やっと彼がこっちの世界に帰ってきた。 「あ、うん。正解。あっ、えっとご案内します。すみません、驚いたもので」 何に驚いたんだろう………。 謎は深まるばかりだ。
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