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ぴーちゃんは、窓柵にとまっていた。窓を開けたら、桜の花びらと一緒に入ってきて、遥香の肩にとまって離れなかった。
看護師や三枝医師もぴーちゃんだとわかったが、最初に遥香が
「ぴーちゃん、また迷子になったの?」
と話しかけたから驚いた。
ぴーちゃんをきっかけに記憶が戻るかもと、スマホをチェックしたら、ぴーちゃんの写真や動画がないことに気付き復元していた。
真也はまだ相談室でボンヤリしていた。今は美希を愛してない。結婚したいと思っていたのに。自分のいい加減さに、絶望していた。
「最低だな」
重い足取りで、ぴーちゃんを迎えに遥香の病室に入った。
「谷本さんが、ぴーちゃんを助けて下さったのですね。ありがとうございます」
真也は深々と頭を下げた。
「私じゃないです」
真也は驚いて顔をあげた。
「親友なんですよ。ぴーちゃんを警察まで連れて行ってくれて、それに、わざわざ車を出してくれたんです。えーと。ダメですね名前が出てこない」
恥ずかしそうに微笑む遥香が眩しくて、真也はまた、うつむいてしまった。
ピッピッピッピっ、ぴーちゃんが真也の肩で忙しく鳴いている。
「あのぉ、ゆっくりでいいと思います。僕も……そばにいますから」
キョトンとした遥香の顔を見て
「いや、あの、変な意味はないです。今のはぴーちゃんが言ったので」
肩に乗っているぴーちゃんが、またピピッピピッと鳴いた。
「ねっ」
遥香は、頬をぷくっと膨らませて、楽しげに笑った。
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