幸せの青い鳥

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 北宮警察署 駐車場の桜が散り始めて、桜吹雪舞う中入ってきたのは槙野 美希(まきの みき)29歳。三台分空いてる駐車場の真ん中に停めた。  後部座席から取り出した、加湿器の箱を抱えて、車の前に来た。 「えっ、やば」  美希の車は二台分使って斜めに停まってる。実質、あと一台しか駐車できない。 「もう、いいわ、めんどくさい」  しれっと北宮警察署に向かった。 「こんにちは。えー、どうされましたか」  カウンターに乗せられた、加湿器の箱を凝視しながら、警察官が尋ねてきた。爆弾犯の疑いをもっていたのかもしれない。 「先ほど電話した、拾得者です」  一通り確認が終わり 「拾得者様には権利が生じますが」 「権利は放棄しますので」 「わかりました。遺失者様には拾得者様のご連絡先、お名前はお教えいたしません」 「よろしくお願いします」  玄関から出ようとした瞬間、走ってきた男性と肩がぶつかった。 「あっ、すみません」  180センチはあるだろう長身、短髪だが、サラサラ前髪、涼しげな目元。鼻筋がスッとして、全方位完璧にタイプな人だった。 「……大丈夫です」  可愛い顔を意識しながら、彼を見上げた。 「失礼しました」  彼は軽く会釈して通り過ぎようとしたが、 「あの、ぴーちゃんの」  美希は目を丸くして 「ええっ、はい」 「うわぁ、そーですか。ありがとうございます」  彼は興奮気味に大声で喜んでいる。 「お礼を…」  彼は、名刺の裏に何か書いて差し出した。 「三枝 真也(さえぐさ しんや)といいます」 「はぁ」 「もし、よろしければ、ご連絡ください。ぜひ、お急ぎですよね。すみません」  彼は、そう言い残して早足に北宮警察署へ消えた。  名刺の裏には携帯番号が書かれていた。平静を装いながら、心臓は爆爆しっぱなしで倒れそうだ。  車のドアを閉めた瞬間。 「きゃー、うそぉー、どうしよう」  ほっぺたをつねってみた。 「いったーい。あはは」  大声ではしゃいでいたら 「ん?LINE、遥香か」  『無事、警察についた?』  『ぴーちゃんは大丈夫だった?』  『ぴーちゃんの飼い主さんには会えた?』     『うん、大丈夫、ぴーちゃんは預かってもらったよ』  その後を打つ手が止まった。     『会えてないよ。権利は拒否したよ』  遥香に秘密ができてしまった。    
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