2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
北宮警察署 駐車場の桜が散り始めて、桜吹雪舞う中入ってきたのは槙野 美希29歳。三台分空いてる駐車場の真ん中に停めた。
後部座席から取り出した、加湿器の箱を抱えて、車の前に来た。
「えっ、やば」
美希の車は二台分使って斜めに停まってる。実質、あと一台しか駐車できない。
「もう、いいわ、めんどくさい」
しれっと北宮警察署に向かった。
「こんにちは。えー、どうされましたか」
カウンターに乗せられた、加湿器の箱を凝視しながら、警察官が尋ねてきた。爆弾犯の疑いをもっていたのかもしれない。
「先ほど電話した、拾得者です」
一通り確認が終わり
「拾得者様には権利が生じますが」
「権利は放棄しますので」
「わかりました。遺失者様には拾得者様のご連絡先、お名前はお教えいたしません」
「よろしくお願いします」
玄関から出ようとした瞬間、走ってきた男性と肩がぶつかった。
「あっ、すみません」
180センチはあるだろう長身、短髪だが、サラサラ前髪、涼しげな目元。鼻筋がスッとして、全方位完璧にタイプな人だった。
「……大丈夫です」
可愛い顔を意識しながら、彼を見上げた。
「失礼しました」
彼は軽く会釈して通り過ぎようとしたが、
「あの、ぴーちゃんの」
美希は目を丸くして
「ええっ、はい」
「うわぁ、そーですか。ありがとうございます」
彼は興奮気味に大声で喜んでいる。
「お礼を…」
彼は、名刺の裏に何か書いて差し出した。
「三枝 真也といいます」
「はぁ」
「もし、よろしければ、ご連絡ください。ぜひ、お急ぎですよね。すみません」
彼は、そう言い残して早足に北宮警察署へ消えた。
名刺の裏には携帯番号が書かれていた。平静を装いながら、心臓は爆爆しっぱなしで倒れそうだ。
車のドアを閉めた瞬間。
「きゃー、うそぉー、どうしよう」
ほっぺたをつねってみた。
「いったーい。あはは」
大声ではしゃいでいたら
「ん?LINE、遥香か」
『無事、警察についた?』
『ぴーちゃんは大丈夫だった?』
『ぴーちゃんの飼い主さんには会えた?』
『うん、大丈夫、ぴーちゃんは預かってもらったよ』
その後を打つ手が止まった。
『会えてないよ。権利は拒否したよ』
遥香に秘密ができてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!