2人が本棚に入れています
本棚に追加
ベッドにリュックを放り投げ、制服を脱いでハンガーにかけ、皺を伸ばす。部屋着に着替え、携帯を片手にベッドに横になった。
カメラフォルダの写真をフリップし、前にアスカちゃんと出かけたのはいつだったかと遡る。もう一年も前か。
あのときは新宿のホテルのアフタヌーンティーに連れて行ってもらった。お洒落で可愛らしいスイーツに歓声をあげるアスカちゃんは、すごく可愛らしかった。
アフタヌーンティーの後は新宿の伊勢丹を冷やかした。アスカちゃんは上背があるし、スタイルもいいからみんなが見惚れていて、内心鼻高々だったのだ。
普段は入れないハイブランドの店も、アスカちゃんと一緒なら堂々と入れて、とても楽しかったのを思い出した。
ふと、階下の物音に耳を澄ます。母とアスカちゃんは、何を話しているのか。
そういえば、アスカちゃんのお母さんである紘子おばちゃんの十三回忌が、今度の秋にあるはずだ。その話だろうか。
紘子おばちゃんは、十三年前に病気で亡くなった。
当時は、母も足繁く見舞いに通ったらしい。母は紘子おばちゃんが大好きで憧れだったから、亡くなったときは本当に悲しかったと言っていた。
わたしは、幼少時に紘子おばちゃんに何回か会ったことがあるらしいのだけど、ほとんど記憶がない。
物心つかない頃だから仕方がないよね、と母が寂しそうに呟いたのが印象に残っている。
アスカちゃんは、面差しが写真で見た紘子おばちゃんに似ている。
だからだろうか。母はアスカちゃんと頻繁に会って親しくしている。
けれども、アスカちゃんのお父さんである栄治おじさんは、それを面白く思ってないと聞いている。
アスカちゃんは、栄治おじさんから勘当されているらしい。どうしてなのか。
理由はなんとなく察するけれども、わたしは納得がいっていない。この令和の時代にそんな価値観、何の意味もないってわたしは思ってる。
最初のコメントを投稿しよう!